ポリリズムの入門 — ドラマーのための最短ルート(譜例3つ)
ポリリズム(polyrhythm)は異なる等間隔の拍(パルス)を同時に重ねること。
例)「3つで割る手」と「2つで割る足」を同時に鳴らす=3対2(3:2)。
まずは体で感じる → 仕組みを理解する → セットに展開するの順で進めましょう。この記事では、初心者でもすぐ試せる譜例を3つ用意しました(手拍子×足/スネア×バス)。
Contents
まずは土台:数え方と見方
- 最小公倍数(LCM)法:3:2 なら 3 と 2 の最小公倍数は 6。1周期を 6コマに割ります。4:3 なら LCM は 12。1周期は 12コマ。
- 譜例の凡例:
x = 打つ
、· = 休み(間)
、│ = 周期区切り
- テンポ:メトロノームは 40–60 BPM(四分基準)から。1周期を4回繰り返す→入れ替える→テンポを少し上げる、のループが基本。
譜例1:3対2(手=3、足=2)— 足踏み+手拍子で体に入れる
ねらい:3と2の重なり方(同時になるのは“周期の頭だけ”)を体感。
3:2(1周期=6コマ)
カウント: 1 2 3 4 5 6 │ 1 2 3 4 5 6
手(3) : x · x · x · │ x · x · x ·
足(2) : x · · x · · │ x · · x · ·
手順
- 足だけ:1と4で踏む(6コマ中、3コマおき)。
- 手だけ:1・3・5で手拍子(2コマおき)。
- 同時に:図の通りに重ねる。
- 入れ替え:手=2、足=3 でもやってみる(脳の混線を解消)。
コツ
口で「タ カ タ|タ カ タ」(手)/「ターー|ターー」(足)と唱える。迷ったら同時になる1に戻る。ここだけは必ず合う。
譜例2:3対2(スネア=3、バス=2)— セットでの基本レイヤー
ねらい:セットで“3を手、2を足”に割り振る。必要ならハイハットで拍を支える。
3:2(1周期=6コマ)※ハイハットは任意で拍(1と4)に入れてOK
カウント: 1 2 3 4 5 6 │ 1 2 3 4 5 6
SN(3) : · x · x · x │ · x · x · x
BD(2) : x · · x · · │ x · · x · ·
手順
- バスのみ(BD):1・4。
- スネアのみ(SN):1・3・5。
- 同時に:譜例どおり。
- 応用:ハイハットで四分の拍(1・4)を軽く置くと安定。
- グルーヴ化:1周期を2拍と捉え、フィル前後やブレイクで使う。
チェックポイント
アタマ(1)以外で同時に鳴らそうとしない。重ならないのが正解。音量バランス:バス(2)が土台、スネア(3)が上物の意識。
譜例3:4対3(手=4、足=3)— 次の代表格
ねらい:さらに一段階複雑な重なりを習得。LCM=12 を使います。
4:3(1周期=12コマ)
カウント: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
手(4) : x · · x · · x · · x · ·
足(3) : x · · · x · · · x · · ·
手順
- 足(3)だけ:1・5・9(4コマおき)。
- 手(4)だけ:1・4・7・10(3コマおき)。
- 同時に:上記を重ねる(重なるのは1のみ)。
- セット化:手=スネア、足=バス。ハイハットで三連系の細分(12等分の感覚)を薄く刻むと感じやすい。
コツ
口唱和例:手(4):タ.. タ.. タ.. タ..(3コマおき)/足(3):タ… タ… タ…(4コマおき)
よくあるつまずきと対処
- 「テンポを上げると崩れる」 → 1周期を分解練習(手だけ→足だけ→同時)に戻す。周期を4回ループできたら +5 BPM。
- 「どこで合うか見失う」 → どのポリリズムでも必ず1で重なる。迷ったら1へ着地。
- 「ポリメーターと混同」 → ポリリズム=同じ時間幅を異なる等分で同時進行。
ポリメーター=小節線の位置(周期長)が異なる並走。まずはポリリズムから。
練習レシピ(10分)
- 3:2(手3・足2)……2分
- 3:2(入れ替え)……2分
- 3:2(スネア×バス)…3分(譜例2)
- 4:3(手4・足3)……3分(譜例3)
※毎回録音→最後の1分で聴き直し、ズレ方を可視化。翌練で修正。
発展アイデア
- 役割を入れ替える(手=2/足=3、手=3/足=2 など)。
- ハイハットで四分や8分を淡く刻む。
- アクセント移動(例:スネアの3発を弱・強・弱に)。
- フレーズ締めに1周期のフィル→ダウンビートに着地。
ポリリズムは“同時に当てにいかない”のがコツ。1だけを共有し、あとは別々に等間隔を守る。譜例の手順どおり進めれば、今日から現場のグルーヴに自然と混ぜ込めます。楽しんで!