ドラムの真実 第4回
音量は「動き」で決まる
ここ数回の話は、すべてここへ繋がっている
これまでDrummer JAPANでは、
- 弱い音ほど難しい
- 音量=高さ
- テンポ=動き+認知
というテーマを通して、ドラムの「安定」について考えてきました。
今回のテーマは、その流れのひとつの到達点です。
音量=動き
これは、気合いや感覚だけの話ではありません。
物理的にも、演奏技術としても、とても本質的な話です。
音量が安定しない時、多くの人がやってしまうこと
音量が揃わない時、多くのドラマーは「音」そのものを直そうとします。
強すぎたから、次は弱く叩こう。
小さすぎたから、次は強く叩こう。
もっと音を揃えよう。
もちろん、その意識自体は間違いではありません。
ただ、ここで大事なのは、音はあくまで「結果」だということです。
結果だけを見て修正しようとしても、なかなか安定しません。
なぜなら、音を生んでいる原因は、もっと手前にあるからです。
その原因が「動き」です。
音量を決めているもの
ドラムの音量は、主に次の3つで決まります。
1. 高さ
スティックを高く上げれば、落ちる距離が長くなります。
距離が長くなれば、スティックは自然に加速します。
高く上げる。
速く落ちる。
エネルギーが増える。
音量が上がる。
とてもシンプルです。
逆に、低い位置から叩けば、エネルギーは小さくなり、音量も小さくなります。
以前の「音量=高さ」という話は、まさにここに繋がっています。
2. 速度
同じ高さから叩いても、振るスピードが変われば音量は変わります。
勢いよく振れば音は大きくなり、減速すれば音は小さくなります。
つまり、音量は高さだけで決まるわけではありません。
どの高さから、どんな速度で動かすのか。
その組み合わせが、音量を作っています。
3. 軌道
意外と見落とされやすいのが、軌道です。
毎回違う通り道でスティックが動いていると、
これらが少しずつ変わります。
すると、音量も音色も不安定になります。
逆に、
この3つが揃ってくると、音量は驚くほど安定します。
弱い音ほど難しい、本当の理由
以前、「弱い音ほど難しい」という話をしました。
これも、結局は同じところに戻ってきます。
強い音は、多少動きがズレてもごまかせることがあります。
勢いで押し切れてしまう場面もあります。
でも、弱い音はそうはいきません。
小さい音ほど、
こうしたものが、そのまま音に出ます。
弱音は、ただ小さく叩く技術ではありません。
動きをどれだけ細かくコントロールできているかが、そのまま表れる音です。
つまり、弱音とは「動きの精度」そのものです。
テンポの安定も、実は動きの問題
「テンポ=動き+認知」の回でも触れましたが、テンポが安定している人は、身体の動きと内部の時間感覚が一致しています。
頭の中で感じている時間。
実際に身体が動くタイミング。
この2つが噛み合っているから、タイムが安定します。
反対に、毎回動きが変われば、タイムも揺れます。
振り上げる高さが変わる。
落ちる速度が変わる。
返ってくる軌道が変わる。
それだけで、音の位置は少しずつズレていきます。
テンポも、音量も、弱音も。
別々の問題に見えて、根っこには同じものがあります。
それが「動き」です。
では、何を練習すればいいのか
答えは、とてもシンプルです。
同じ動きを作ること
これです。
ただし、シンプルだから簡単という意味ではありません。
むしろ、ここにドラムの難しさと面白さがあります。
おすすめの練習
テンポ60で叩く
まずは遅いテンポで練習します。
速いテンポでは、動きのズレをごまかせてしまうことがあります。
でもテンポ60では、ひとつひとつの動きがはっきり見えます。
ごまかしが効かないぶん、自分の動きがよく分かります。
片手ずつ叩く
両手で叩くと、得意な手が苦手な手を隠してしまうことがあります。
片手ずつ叩くと、弱い部分がそのまま出ます。
高さが揃っているか。
軌道がブレていないか。
余計な力が入っていないか。
片手練習は、動きを確認するためのとても有効な方法です。
高さを固定する
例えば、10cm。
毎回その高さから叩くと決めます。
高くなったり、低くなったりしないようにする。
それだけで、音量の安定に大きく影響します。
速度を揃える
勢い任せに叩かないこと。
同じ高さから、同じスピードで動かす。
強くしたい時も、弱くしたい時も、まずは自分の動きがどう変わっているのかを感じることが大切です。
軌道を揃える
ここは特に重要です。
真っ直ぐ下ろして、真っ直ぐ返す。
単純に聞こえるかもしれません。
でも、この「同じ道を通る」ということが、音の安定を大きく左右します。
音を直そうとしない
ここが、今回いちばん伝えたいポイントです。
音が乱れた時、すぐに音を直そうとしない。
まず見るべきなのは、動きです。
音は、その結果として変わります。
原因を変えれば、結果も変わります。
音量を安定させたいなら、音ではなく、動きを整えることです。
結論
音は結果。
原因は動き。
ドラムは「音の楽器」に見えます。
もちろん、それは間違いではありません。
でも同時に、ドラムはとても運動的な楽器です。
どれだけ良い動きを作れるか。
どれだけ同じ動きを再現できるか。
どれだけ無駄な力を抜いて、必要な動きだけにできるか。
そこが、音量の安定に繋がります。
タイムの安定にも繋がります。
弱音の美しさにも繋がります。
もし最近、
そう思っているなら、一度「音」ではなく「動き」に意識を向けてみてください。
ドラムは、そこから大きく変わります。
Drummer JAPAN
スティックを握って志した瞬間から、あなたはドラマー。