日本のドラマー人気投票2024 21位〜30位
総括コメント(21位〜30位)
21〜30位は、ただの“惜しくも届かなかったゾーン”ではありません。バンドの精神性を支える要(真矢/ヤガミトール)、超一流アーティストを背後から押し出す現場の矜持(KOUHEI/淳士)、時代を作ったレジェンドの記憶と現在進行形の影響力(樋口宗孝/高橋幸宏)、スタジオ/ライブを縦横に渡る職人性(長谷川浩二/山木秀夫)、そして個性とエンタメ性で観客を“巻き込む”スター性(ピエール中野/川西幸一)——この10名が並ぶことで、日本のドラムの多面性が一枚のパノラマのように立ち上がります。
票の中身を読み解くと、単純な知名度だけでは到達できない支持の質が見えてきます。長年の現場で培った信頼、最新ツアーやメディア露出での“今”の説得力、SNS時代の発信力、そして「歌をどう立たせるか」というアンサンブル志向。特に、派手な技巧をあえて抑え、“曲の呼吸に合わせて打つ”美学が票につながっている点は、今年のランキングの重要な示唆です。
また、この区間は「ドラマーはリズム隊」から「サウンドの演出家/設計者」へという認識のアップデートが如実。キックの置き方一つで曲の歩幅を変え、スネアの余韻ひとつで情景を描く。さらにステージの立ち振る舞い、MCやキャラクター、SNSでの言葉選びに至るまで——“音の外側”の表現まで含めて評価されているのが、21〜30位の顔ぶれに共通する強みです。
レジェンド勢の存在も見逃せません。樋口宗孝のメタルを世界基準へ押し上げた推進力、高橋幸宏のポップス×テクノを洗練させた設計思想は、いま聴き直しても最先端のアイデアに満ちています。投票という行為が、「記憶の更新」や「世代間の共有」として機能した点も、今年のランキングの美しいところです。
そして現役の職人たち。長谷川浩二と山木秀夫は、“派手さ”ではなく“解像度”で勝負するタイプ。アリーナでもスタジオでも、「必要十分+α」を出し切る調整力が、プロの耳と一般リスナー双方に評価された結果と言えるでしょう。対して、ピエール中野と川西幸一は、演奏の強度に“遊び心と物語”を足してくるプレイヤー。音とキャラクターの二段構えで、観客を没入させる術を知っています。
来年の見どころは三つ。①“歌伴の美学”の再評価はさらに進む、②現場の職人がSNSで可視化される流れが票に直結、③レジェンド再発掘と若手の台頭が同時進行。つまり、“速い・巧い”の次にある「曲を動かす力」「場を設計する力」が、ますますランキングを左右していくはずです。
最後に、聴き比べのヒントを少し。
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- キックの置き方:前のめり/後ろ乗りで曲の歩幅がどう変わるか
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- スネアの余韻:短く切るか、少し残すかで情景がどう変化するか
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- シンバルの句読点:クラッシュの“打ちどころ”がサビの輪郭をどう描くか
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- フィルの意味:技術披露ではなく“物語をめくる”瞬間になっているか
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- 休符の勇気:叩かない一拍が、どれほど大きな言葉になっているか
この10人の並びは、「ドラムは音楽の中心であり、同時に物語の語り手だ」という事実を、今年も雄弁に物語っています。2025年、誰がこのゾーンからベスト20へ駆け上がるのか——すでにリハは始まっています。
21位 真矢(257票)
プロフィール
LUNA SEAのドラマーとして絶大な知名度を誇る真矢。バンド結成から30年以上にわたり、独自のドラミングでオルタナティブロックのサウンドを牽引してきました。彼のドラミングは、硬質でパワフルながらも繊細なニュアンスを忘れないのが特徴で、スネアの鳴らし方ひとつにも色気を感じさせます。バンド活動以外にもタレント・メディア出演、さらには料理好きとしても知られ、幅広い活動がファン層を広げています。
寸評
今回21位にランクインした背景には、彼の「ドラマー以上の存在感」があるでしょう。単にリズムを刻むのではなく、バンド全体の雰囲気やステージの熱量をコントロールする司令塔としての役割を担ってきました。テレビ出演などで親しみやすいキャラクターを見せる一方、ライブでは圧倒的な迫力で魅了する“二面性”も人気の理由です。ファンにとっては、バンドを支える屋台骨でありながらエンターテイナーとしても愛される存在と言えます。
公式URL
LUNA SEA Official Website
真矢 公式X
22位 ヤガミトール(257票)
プロフィール
BUCK-TICKの結成初期から参加し、40年近くにわたりバンドを支える名ドラマー。“アニイ”の愛称で親しまれ、クールで飾らない人柄とストイックな演奏姿勢でファンを魅了してきました。派手なフィルよりも一打一打の重みを重視し、楽曲に深みを与えるスタイルが特徴。特にタム回しの重量感や緊張感あるスネアワークは唯一無二です。近年では執筆やインタビュー出演などでも存在感を発揮しています。
寸評
同票ながら僅差で22位となったのは、BUCK-TICKという孤高の存在を支えてきた職人芸がファンに再評価された証拠です。彼のドラムは自己主張を超えて「曲を輝かせる」ことに徹しており、シンプルながら圧倒的な説得力があります。技巧派が台頭する昨今でも、こうした“歌心を支えるドラム”が票を集めたのは実に興味深い現象です。今後も「最後まで叩き続ける」という信念を胸に、シーンに重厚な存在感を残し続けるでしょう。
23位 KOUHEI(243票)
プロフィール
ONE OK ROCKのサポートドラマーとして知られるKOUHEIは、圧倒的なパワーと正確なリズム感を武器に、世界を股にかけて活躍中。ロックからポップ、エレクトロニック要素を融合した楽曲でも自在に対応できる柔軟さが魅力です。彼のプレイは音数よりも「躍動感」を大切にしており、観客の体を自然に動かす力があります。セッションワークやSNSでの発信も積極的で、若い世代のファンを中心に支持を拡大しています。
寸評
サポートという立場でありながらこの順位に食い込んでいるのは驚異的。ONE OK ROCKの世界的な人気と共に、彼のドラミングがファンに深く刻まれている証拠でしょう。シンプルながらバンド全体を突き動かすエネルギーは、まさにライブ映えの極致。技巧を誇示するのではなく“曲を最高に盛り上げる”ことに徹している点が高評価に繋がりました。今後さらに知名度が広がれば、TOP10入りも夢ではありません。
公式URL
KOUHEI Official Instagram
24位 淳士(243票)
プロフィール
SIAM SHADEの元ドラマーであり、現在はAcid Black CherryやT.M.Revolutionなど数多くのアーティストを支える淳士。正確無比なリズムキープと華のあるステージングで、多方面から高い信頼を集めています。ロックをベースにしながらも、ファンクやポップスを吸収したスタイルは非常に多彩で、幅広いジャンルに対応できる点が大きな魅力です。見た目やキャラクターの明るさもあいまって、ファンからの支持は根強いです。
寸評
サポートミュージシャンとしてのキャリアを積み重ねながら、ここまで票を集めたのは「どんな現場でも最高のグルーヴを提供する」という信頼感の表れでしょう。派手さの中に実直さがあり、アーティストの個性を最大限に引き出すバランス感覚はベテランならでは。今後もJ-ROCKの重要な現場で欠かせない存在として輝き続けること間違いありません。
公式URL
淳士 Official X
淳士 Official Instagram
25位 樋口宗孝(239票)
プロフィール
LOUDNESSの創設メンバーであり、日本を代表するヘヴィメタルドラマー。残念ながら2008年に逝去しましたが、今なお彼のドラミングは伝説として語り継がれています。超高速ツーバスと鋭いシンバルワークで、当時の日本のメタルシーンを世界レベルに押し上げました。テクニカルでありながら熱量あふれるプレイは、数多くの若手ドラマーに多大な影響を与えています。
寸評
存命でなくともこの順位にランクインするのは、彼の存在がいかに大きかったかを物語っています。LOUDNESSの世界進出における原動力となり、日本人ドラマーが世界基準で戦えることを証明しました。その功績は後世に受け継がれ続けており、現在も彼をリスペクトする声は後を絶ちません。まさに「永遠のレジェンド」と呼ぶにふさわしい存在です。
26位 高橋幸宏(238票)
プロフィール
YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のドラマー兼ボーカリストとして世界的に名を馳せた高橋幸宏。シンセサイザーと電子ビートが主流になる時代において、生ドラムとテクノの融合を実現したパイオニア的存在です。彼のシンプルかつ洗練されたドラミングは、日本のポップスやロックのあり方に大きな影響を与えました。さらに、作曲・プロデュース・ファッション活動でも先駆者的役割を担い、カルチャーアイコンとしての存在感を確立しました。
寸評
惜しくも2023年に他界しましたが、彼の音楽的功績と人柄は今なお多くの人々の心に生き続けています。票が集まったのは、彼が単なるドラマーに留まらず“音楽文化をデザインした人物”であることをファンが忘れていないからでしょう。YMOの軽やかで独創的なリズムは、現代のJ-POPやエレクトロニカにも色濃く受け継がれています。歴史を振り返る上で欠かすことのできない巨星として、この順位はむしろ納得の高さです。
公式URL
高橋幸宏 Official Site
27位 長谷川浩二(231票)
プロフィール
THE ALFEEのサポートドラマーとして長年活動し、近年では多彩なセッションやソロ活動でも知られる長谷川浩二。正確無比なリズムキープとエネルギッシュなプレイが魅力で、バンドのスケール感を支えるドラミングには定評があります。アリーナクラスの大舞台でも動じない安定感と、観客を巻き込むパワーを併せ持ち、幅広い音楽シーンで信頼を勝ち得てきました。
寸評
27位という順位は、派手さを好むランキングの中でも「堅実なドラマーがしっかり支持されている」ことを示しています。彼の演奏はテクニックだけでなく、聴く人に安心感を与えるのが特徴。大御所アーティストから若手まで、誰とでも音楽的に噛み合う柔軟性はプロの証です。ファンにとっては「いぶし銀のドラマー」であり、長く愛される理由がここにあります。
公式URL
KOZY HASEGAWA
28位 山木秀夫(224票)
プロフィール
日本を代表するセッションドラマーのひとりで、松任谷由実、桑田佳祐、小田和正など数えきれないほどのトップアーティストを支えてきた山木秀夫。卓越したテクニックと幅広いジャンル対応力を持ち、ポップスからジャズ、ロックまで自在に叩き分ける万能型です。独自の柔らかいタッチと緻密なリズム感覚は、アーティストの楽曲をより豊かに彩ります。
寸評
ランキング上位に派手な名前が並ぶ中で、この順位に食い込むのは“本物を知るファン”が多く投票した結果でしょう。彼のプレイは一聴して派手ではないものの、曲全体を包み込むような安心感と奥深さがあります。特にバラードで見せる繊細なシンバルワークは必見。まさに「日本の音楽シーンを裏から支えた立役者」と言える存在であり、ドラマーなら一度は憧れる名手です。
公式URL
山木秀夫 Official Site
29位 ピエール中野(222票)
プロフィール
凛として時雨のドラマーとして広く知られるピエール中野。破壊的な爆音プレイから繊細なリズム構築までを自在に操る、その振れ幅が圧倒的な個性を生んでいます。ロックフェスやライブではカリスマ的存在感を放ち、ソロ活動やDJとしても独自の音楽観を発信。SNSでのユーモラスなキャラクターやファンとの距離感の近さもあり、若い世代を中心に強い支持を得ています。
寸評
29位は意外に感じる人もいるかもしれません。ライブパフォーマンスでは毎回観客を熱狂させる力があり、その爆発力は間違いなくトップクラス。にもかかわらずこの順位に留まったのは、彼の人気が広くライト層に浸透している反面、投票型ランキングでは熱心なファンの偏りが影響したのかもしれません。しかしながら、彼が“今最も現場で輝くロックドラマーのひとり”であることに疑いはなく、今後の活動によってはさらに上位を狙えるでしょう。
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ピエール中野 Official X
ピエール中野 Official Instagram
30位 川西幸一(221票)
プロフィール
ユニコーンのドラマーとしてデビュー以来、独自の存在感を放ち続ける川西幸一。力強くもユーモラスなドラミングは、バンドのユニークな世界観を形作る重要な要素です。ステージ上での軽妙なトークや愛嬌のあるキャラクターもファンに親しまれ、単なるリズムキーパーを超えた“エンターテイナー”として評価されています。
寸評
30位という数字以上に、シーンに与えた影響は大きいでしょう。彼のドラムは、ロックの勢いとポップの楽しさを同時に伝える稀有なスタイル。ユニコーンの楽曲に欠かせない軽快さと遊び心は、まさに川西の持ち味そのものです。ランキングにおいても「楽しませるドラマー」という希少な立ち位置を確立しており、ファンの記憶に深く刻まれています。
公式URL
ユニコーン Official Site