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「タメ」は鍛えられるのか?|後ろノリを身体に入れる練習法

この記事の結論

タメは、遅らせる練習ではなく
“待てる身体”を作る練習である。

前回の記事では、「タメ」とは意図された微細な時間遅延であり、単なるモタりではないと解説しました。

では次の疑問です。

タメは、練習で身につくのか?

結論から言えば、身につきます。

ただし、ここで最も危険なのは「後ろにズラして叩けばいい」と考えることです。それをやると、ほとんどの場合、タメではなくモタりになります。

大前提:
タメの練習とは、音を遅らせる練習ではありません。内部テンポを保ったまま、音を後ろへ配置できる身体感覚を育てる練習です。

練習全体の地図

タメを作る5つの感覚をスマートフォン向けに整理した図解
練習 01

歩きながらクリックを聴く

最初にやるべきことは、ドラムを叩くことではありません。

まずは、時間を身体に入れることです。

拍を点ではなく流れで感じる練習をスマートフォン向けに示した図解

やり方

  • BPM60〜70でクリックを鳴らす
  • 部屋をゆっくり歩く
  • 足音とクリックの関係を感じる
  • クリックを追わず、身体の流れに入れる
狙い 拍を「点」ではなく「周期」として感じる。
注意 合わせに行きすぎると身体が固まる。
練習 02

スネアだけを後ろにしない

タメを作ろうとして、スネアだけを遅らせる。これは非常に危険です。

本物のタメは、ドラムセット全体の配置バランスで成立します。

タメはスネア単体ではなく関係性で作ることを示した図解

やり方

  • 8ビートを叩く
  • ハイハットは少し前へ運ぶ意識
  • キックは中央に置く意識
  • スネアは少し後ろに沈む意識
ポイント:
「全部を後ろにする」のではなく、前・中央・後ろの立体感を作る。
耳で確認

「後ろにいる」と「遅れている」は違う

ここで一度、実際の音と映像で確認しておきたいことがあります。

タメは、ただタイミングを遅らせることではありません。クリックや他の楽器との関係の中で、音が深い場所に置かれている状態です。

YouTubeで見るポイント

見てほしいところ:
ドラムとベースが、拍のどこに音を置いているかを見てください。ポイントは「遅らせる」ことではなく、他の楽器との関係の中でグルーヴがどう沈むかです。

Spotifyで聴くポイント

聴いてほしいところ:
ドラムだけを追いかけるのではなく、ベースとスネアの間にある空気を聴いてください。音数が多くないのに、なぜ前へ進んで感じるのか。そこに「待てる身体」のヒントがあります。

この確認を挟んでから次の練習に進むと、「スティックを落とす」「グルーヴを歌う」という言葉が、単なる精神論ではなく身体の操作として見えやすくなります。

練習 03

スティックを“落とす”

タメの深いドラマーほど、叩きに行っていません。

むしろ、重力を使って音を落としています。

力で叩く音と重力で落とす音の違いを示す図解

やり方

  • スティックを10cmほど上げる
  • 力で振らず、自然落下させる
  • リバウンドを殺さない
  • 音の太さとタイミングの変化を聴く
力で叩く音 硬い・浅い・前に突っ込む。
落とす音 太い・深い・後ろに感じる。
練習 04

グルーヴを歌う

タメが深い演奏には、必ず“呼吸”があります。

つまり、タメはリズムの問題であると同時に、フレーズの問題でもあります。

タメを呼吸と句読点として示すスマートフォン向け図解

やり方

  • 8ビートを口で歌う
  • ハイハットを「チッ」
  • キックを「ドン」
  • スネアを「タン」と歌う
  • 歌の“間”をそのまま手足に移す
ポイント:
機械的に数えるより、歌った方が“間”が見える。タメはリズムの中にある呼吸です。
練習 05

クリックを消す

最後は上級編です。

クリックを常に鳴らしていると、自分の内部テンポがどれくらい育っているか見えにくくなります。

クリックを減らして内部テンポを試す練習を示す図解

やり方

  • 最初は2拍4拍だけクリックを鳴らす
  • 慣れたら小節頭だけにする
  • さらに4小節に1回だけ鳴らす
  • クリックが戻ってきた瞬間、自分のズレを確認する
見えるもの 自分が走るのか、モタるのか。
育つもの クリックに依存しない内部テンポ。

やってはいけない練習

「わざと遅らせる」だけの練習

これはタメではなく、モタりを強化する危険があります。

身体を止めて待つ

タメは止まることではありません。身体の流れは前へ進み続けています。

表面だけ真似する

“黒人っぽく”“後ろっぽく”と雰囲気だけで真似すると、不自然で重い演奏になりやすい。

結論:タメとは「待てる力」である

焦らない。止まらない。
でも、深く沈む。

ドラマーが言う「タメ」は、単なる遅れではありません。

それは、時間感覚、身体運動、重力、呼吸、音色、心理状態が融合した、極めて人間的な現象です。

だから本当に深いドラマーほど、焦っていない。急いでいない。でも、前へ進む。

タメとは、
時間を遅らせる技術ではなく、
時間の中で待てる力である。

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