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BPM60練習法|1秒に1打でわかる、ドラムのズレと待つ力

1秒に1打。ごまかしが消える練習テンポ

BPM60は、遅い。

メトロノームを鳴らしてみると、1拍と1拍のあいだに、思ったより長い空白がある。

1分間に60拍。
つまり、4分音符が1秒に1つ。

数字としては、とても分かりやすい。
でも、ドラムの練習テンポとして見ると、BPM60はかなり手ごわい。

この記事で掴むこと

  • BPM60が「遅いだけのテンポ」ではない理由
  • 1打、裏、16分、戻りで確認する順番
  • 10分でできる実践メニュー

速いテンポでは、勢いで通過できることがある。
音数を増やせば、多少のズレも流れの中に隠れる。

しかしBPM60では、そうはいかない。

1打ごとの入口。
振り上げる高さ。
落ちる速度。
リバウンドの戻り方。
次の音までの待ち方。

すべてが見えてしまう。

BPM60の1秒に1打の余白を示すインフォグラフィック
BPM60では、音を出していない時間まで見えてくる。

前回の「BPM120の魔力|テンポの地図 #1」が「時間の中に座れているか」を問うテンポだとしたら、BPM60は「1打を本当に置けているか」を問うテンポである。

BPM60は、初心者用の遅いテンポではない

BPM60と聞くと、初心者向けのゆっくりした練習だと思う人もいるかもしれない。

もちろん、最初にフォームを確認するには向いている。
手順を覚えるときにも使いやすい。

ただ、それだけではない。

BPM60は、上手い人ほど怖さを知っているテンポだと思う。

なぜなら、遅いテンポでは「待つ力」が必要になるからだ。

クリックが鳴る。
次のクリックまで、まだ時間がある。

そのあいだに、身体が勝手に動きたくなる。
不安になって、少し早く入る。
待ちきれなくて、音が前に出る。
逆に、慎重になりすぎて遅れる。

テンポが遅いほど、音を出していない時間が長い。
その時間をどう過ごしているかが、そのまま次の1打に出る。

だからBPM60は、単に「遅く叩く練習」ではない。

音を出していない時間まで含めて、ビートを保つ練習である。

BPM60で見る場所

音を出す瞬間だけでなく、次の1打までの「待ち方」を見る。

まずは、4分音符だけでいい

最初にやることは、難しくしない。

メトロノームをBPM60にする。
スネアでも練習パッドでもいい。
右手だけで、4分音符を叩く。

1、2、3、4。

これを5分続ける。

やることは単純だが、見るべき点は多い。

  • 毎回同じ高さから叩けているか
  • クリックより前に出ていないか
  • クリックを待ちすぎて遅れていないか
  • 音量が1打ごとに変わっていないか
  • リバウンドを握りつぶしていないか
  • 肩や首に力が入っていないか

大事なのは、うまく聞こえるフレーズを叩くことではない。

1打を、同じ場所に置くこと。

BPM60では、それだけでも十分に練習になる。

クリックに合わせるのではなく、クリックと重ねる

メトロノーム練習でよくあるのは、クリックを追いかけてしまうことだ。

鳴った。
合わせなきゃ。
次も鳴った。
また合わせなきゃ。

この状態では、常にクリックの後ろから反応している。

もちろん、最初はそれでもいい。
ただ、BPM60の練習では、少しずつ感覚を変えていきたい。

クリックに合わせるのではなく、クリックと自分の音を重ねる。

自分が叩いた音とクリックがぴったり重なると、クリックが一瞬消えたように聞こえることがある。

その瞬間は、耳だけでなく身体でも分かる。

音がぶつからない。
余計な引っかかりがない。
クリックと自分の1打が、同じ場所に立つ。

この感覚を探す。

BPM60は1拍が長いぶん、ズレたときの気持ち悪さも分かりやすい。
だから、練習テンポとして優れている。

練習中の耳の置き方

クリックを追うのではなく、自分の音がクリックの上に立つ瞬間を探す。合った時は、クリックが少し消えたように聞こえる。

8分音符にすると、弱点がさらに出る

4分音符が安定してきたら、8分音符にする。

右手だけで叩いてもいい。
左右交互にしてもいい。

ここで確認したいのは、クリックの間に入る音だ。

BPM60のクリックは、1秒に1回。
8分音符にすると、その真ん中にもう1打入る。

この「真ん中」が難しい。

表の拍はクリックが教えてくれる。
しかし裏の拍は、自分の中で作らなければならない。

裏が前に寄る。
裏が遅れる。
表に戻るときに詰まる。
左右の音量が揃わない。

こうした弱点が見えてくる。

この段階では、速く叩ける必要はない。

むしろ、遅いテンポで裏を正確に置けるかどうかが重要だ。

クリックだけでは感覚をつかみにくい場合は、60 BPMのシンプルなドラムビートを聴いてみると分かりやすい。
音数が少ないほど、表と裏の置き方がよく見える。

このくらい単純なビートでも、裏が前に寄るだけでグルーヴの印象は変わる。

BPM60前後の音楽を聴いてみる

BPM60を練習テンポとして理解するには、実際の音楽で聴いてみるのが早い。

同じ60前後でも、R&B、Hip-Hop、Rockでは、時間の感じ方がまったく違う。
BPM表記は解析サイトや聴き方によって揺れることがあるため、ここでは「BPM60前後の体感例」として聴いてほしい。

聴くポイント

速さではなく、音と音のあいだにある余白を聴く。ドラムがどこで待っているか。ベースや声が、どれくらい大きな間を使っているか。そこにBPM60の面白さが出る。

R&B / Neo Soul:The Internet「Hold On」

ゆったりしているのに止まっていない。音数を詰め込まず、低い位置で時間を保つ感覚が分かりやすい。

Hip-Hop / Rap:The Streets「Turn the Page」

言葉の密度があっても、土台のテンポ感は大きい。BPM60前後の上に、フロウがどう乗るかを聴く。

Rock / Pop:Imagine Dragons「Shots」

遅いテンポでも、アレンジ次第で前へ進む感じは作れる。ビートそのものより、全体のうねりと広がりを聴いてほしい。

同じBPM60前後でも、グルーヴの重さ、音の置き方、余白の使い方はジャンルで変わる。
だからBPM60は、数字だけで理解するより、実際の曲で聴いた方が身体に入りやすい。

16分音符は、力みの検査になる

さらに進めるなら、16分音符を叩く。

BPM60の16分音符は、極端に速いわけではない。
しかし、油断するとすぐに力む。

特に起きやすいのは、この3つだ。

  • 1打目だけ強くなる
  • 3打目で少し遅れる
  • 4打目から次の1打目へ戻るときに詰まる

これは、手順の問題だけではない。

身体が4つの音を均等に扱えているか。
1拍の中を、きちんと4つに割れているか。
次の拍へ戻るときに、呼吸が止まっていないか。

そこが問われる。

ここで大事なのは、音数を増やしても身体を急がせないことだ。

4分音符でも、8分音符でも、16分音符でも、BPM60の大きな流れは変わらない。

細かく叩くほど、内側の分割は増える。
でも身体全体の時間は、同じ速度で流れている。

ここで急がない

16分音符に進んでも、身体全体の時間はBPM60のまま。細かい音符を叩くほど、呼吸と戻り方を観察する。

片手練習で、左右差を見る

BPM60は、片手練習にも向いている。

右手だけ。
左手だけ。

それぞれで4分、8分、16分を叩いてみる。

両手で叩いていると、得意な手が苦手な手を助けてしまう。
左右交互にすると、流れでなんとなく成立してしまうこともある。

片手だけにすると、隠れていたものが出る。

左手だけ音が小さい。
右手だけ突っ込む。
片方だけリバウンドが戻ってこない。
片方だけ肩が上がる。

これは悪いことではない。

弱点が見えたということは、練習する場所が分かったということだ。

BPM60は、その発見に向いている。

練習メニュー例

実際にやるなら、次の10分で十分だ。

10分メニューの狙い

片手、両手、細かい分割、最後に4分音符へ戻る。この戻りで、身体が本当に落ち着いているかを確認する。

BPM60の10分練習メニューを示すチェックリスト
短時間でも、BPM60で見るべきポイントは整理できる。

1. 右手だけ 4分音符 1分

クリックと音を重ねる。
高さと音量を揃える。

2. 左手だけ 4分音符 1分

右手と同じ音量、同じ高さを目指す。
左手だけが遅れたり、硬くなったりしていないかを見る。

3. 右手だけ 8分音符 1分

クリックの間に入る音が、真ん中にあるか確認する。

4. 左手だけ 8分音符 1分

音量よりも、タイミングとリバウンドを見る。

5. 両手交互 8分音符 2分

R L R Lで叩く。
左右の音量差、打点、戻り方を見る。

6. 両手交互 16分音符 2分

急がない。
1拍の中を均等に4つへ割る。

7. 4分音符に戻る 2分

最後に、また4分音符へ戻る。

ここが重要だ。

細かい音符を叩いたあと、4分音符が深く安定しているか。
それとも、身体がまだ急いでいるか。

戻ったときに分かる。

BPM60でやってはいけないこと

BPM60練習で避けたいのは、すぐに難しくすることだ。

フレーズを増やす。
アクセントを増やす。
足を入れる。
フィルにする。

もちろん、それらも練習としては必要だ。

ただ、BPM60の良さは、単純なことを単純なまま深く見られるところにある。

1打が安定していないのに、フレーズを増やす。
8分が揺れているのに、16分へ進む。
クリックと重なっていないのに、アクセントを足す。

そうすると、練習の目的がぼやける。

まずは、1打。
次に、裏。
次に、細かい分割。
そのあとで、フレーズにする。

この順番を崩さない方がいい。

BPM60で確認する練習順序を示すインフォグラフィック
複雑にする前に、1打、裏、分割、戻りを確認する。

BPM60は、上達を急がせない

速く叩けるようになりたい。
派手なフレーズを入れたい。
難しいことをやりたい。

その気持ちは自然だ。

ただ、ドラムは速さだけで成立している楽器ではない。

音を置く場所。
音を出す前の身体。
音を出した後の戻り方。
次の音までの待ち方。

そういう地味な部分が、演奏の説得力を作っている。

BPM60は、その部分を見せてくれる。

遅いから簡単なのではない。遅いから、隠せない。

だから練習になる。

結論

BPM60は、初心者用のテンポではない。

1打の精度を確認するための、かなり厳しいテンポである。

クリックを追うのではなく、クリックと重ねる。
音数を増やす前に、1打を安定させる。
速くする前に、待てる身体を作る。

BPM60で丁寧に叩けるようになると、BPM120の感じ方も変わる。

1秒に1打。

その余白の中で、自分の動きと時間の癖が見えてくる。

そこから、ドラムは確実に変わる。

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